世の中には、数えきれないほどの勤怠管理ツールが存在します。AIが自動でシフトを組み、複雑な残業計算をミリ単位で行う……。
しかし、それらは本当に私たち「小さなチーム」が欲しかったものでしょうか?
今回インタビューしたのは、アナハイム・エレクトロニクスの開発者。
彼女が作ったのは、自ら「小学生でも作れる」と笑う、驚くほどシンプルなツール『pippon time(ピポンタイム)』。
なぜ、ITのプロが集まる環境で、あえて「引き算」の極致のようなシステムを自作したのか。その裏側には、既存ツールへの不満と、働く人への不器用なほどの愛がありました。
1. 「推し」と「音」から生まれた、名前の秘密
—— まず気になるのが『pippon time』という可愛らしい名前です。どこから着想を得たのでしょうか?
実は、私の推しキャラに「pippon(ぴぽん)ちゃん」という桜の妖精がいるんです。その子の名前を冠しました。響きがとにかく可愛いし、何より自分が愛着を持てる名前にしたかったのが大きいですね。
あとは、ボタンを押す時の効果音もピポン!っていうし。毎朝、嫌々タイムカードを押すのではなく、お気に入りのキャラクターに挨拶するような、そんな楽しい気持ちで一日を始めてほしかったんです。
2. 「AIに丸投げしたくない」経理担当としての本音
—— 開発のきっかけは、ご自身の経理作業でのストレスだったとか。
そうなんです。締め作業や経理を担当する中で、勤怠管理ほど面倒なものはないと感じていました。これまで多くの高機能ツールを試してきましたが、どれも多機能すぎて、うちの規模では要らない機能が多すぎた。
それに、私は「AIにすべてお任せ」という今の風潮に、少しだけ違和感があったんです。スタッフがどう働いているか、自分の目で確認したい。だけど、毎日全員の出退勤をアナログでチェックするのは限界がある……。
「ちょうどいい」自動化のバランス
だから「基本はAIにまあまあ丸投げして楽をするけれど、大事なところは自分でも確認できる」。そして何より、スタッフ自身もタイムカードを見るのが楽しみになるような「見た目」にこだわったツールが欲しかった。既製品にないなら、自分で作るしかないと思ったんです。
- オーバースペックを排除し、必要な機能だけを。
- 「管理」ではなく、チームの「リズム」を作る。
- Pythonによる自社開発だからできる、柔軟なカスタム。
3. ボツにした「華やかな機能」と、残った「シンプルさ」
—— 開発中、あえて「やらなかったこと」はありますか?
実は、UI(見た目)をもっと面白くするために、色々なアクションを追加したかったんです。でも、私の技術力ではそこまで届かなかった(笑)。でも、結果的にそれが「迷いようのないシンプルさ」に繋がりました。
「小学生でも作れる」と自嘲気味に言っていますが、それは「マニュアルを読まなくても、誰でも一瞬で使いこなせる」ということ。エンジニア仲間に完成品を見せた時は「っす。」という一言で流されましたが(笑)、そのくらい日常に溶け込むものが作れたのは、私にとって大きな前進でした。
DAY MODE UI: 視認性を極めた操作画面
DEMO: 1秒で完了する打刻体験
4. 1年間の「アナログ生活」が教えてくれたこと
—— 以前はツールを使わない時期もあったそうですね。
高機能ツールのコストが見合わなくて、1年くらいやめていたんです。そうしたら、毎朝前日の全員の退勤時間をチェックするマジアナログな作業が発生して……。私が現場に居合わせない時間も多いので、その「確認作業」だけで時間が消えていくのが本当に辛かった。
pippon timeを導入してからは、その時間が丸ごと「スタッフとのコミュニケーション」や「別のクリエイティブな仕事」に充てられるようになりました。自分のほしいものを作った。それが一番の節約であり、効率化なんだと実感しています。
5. 働く人の「おはよう、お疲れ様」をデザインしたい
今後は、私たちのような小さな会社や個人店の方々に使ってみてほしいです。「ドシンプルでいいんだ」という方に。また、チームの雰囲気に合わせてUIをカスタムする受け皿も作っています。
働く人には、出勤の「おはよう」と退勤の「お疲れ様」の瞬間に、少しでも良い気分でいてほしい。pippon timeは、そんな小さな願いから生まれたツールです。